池尻雑記:朝のパン活
引っ越してから、子は学校までひとりで通うようになった。
0歳から6歳までは徒歩30分の園へ通い、そして小学校入学から今年の7月までも、同じく30分かかる学校まで送り迎えをしていた。原則は夫が自転車で、雨の日だけ私がバスやタクシーで送っていたのだけれど──それがすべて不要になった。いまだにそのことを夢のように感じている。
ただ、子がマンションの階段をひとりで降りるのが少し怖いらしく、ときどき一緒に降りようとせがむ。「ひとりで行きなよ」といつも言うのだけれど、言われなくてもついていく日がある。それは、トロパンでパンを買いたい日。
初めてトロパンに行ったときは、ネットで評判のクロワッサン、カレーパン、パンオショコラにカステラ、レモンケーキ……気づけば4,000円近く買っていた。
家に帰って食べてみたら、東京ナンバーワンだと思っていたVIRONにも匹敵する美味しさで、そして何より家から行きやすい。それ以来、友人と会う用事の前などに、トロパンに寄ってはパンや焼き菓子を買い込むのが習慣になった。
けれど、ある日ふと思った。
「これほど近いなら、その日に食べる分だけ買えばいいのでは?」と。
それに気づいてからは、その日食べたいもの、必要なものだけを買うようにした。朝ごはんを買うなら、ひとつだけ。
最初は“せっかく来たのに”と後ろ髪をひかれたけれど、不思議と今は慣れてきた。先日も、お昼にビーフシチューと一緒に食べようと、大好きな塩パンをひとつ買った。
焼きたての塩パンをひとつだけ持って歩く道すがら、胸の奥にじんわり嬉しさが広がった。
食べたい時に、食べたいパンだけを買って帰る。
ああ、なんて贅沢なんだろう。
そうしみじみ感じた。贅沢な暮らし、幸せな暮らしとは、こういうことをいう。