私と香水
10代の頃、憧れていた作家・森遥子や山田詠美の影響で、好きな人がふと香りを嗅いだ瞬間、自分のことを思い出してくれるような、つまり自分と香水とが深く結びつくように、いつも同じ香りを纏うことに憧れていた。
10代の頃は、THE BODY SHOPの「アナーニャ」、20代はエルメスの「ナイルの庭」、30代はCHANELの「CHANCE」と変遷はあれど安定した香りのチョイス。ところが40代に入りずいぶんと迷走。ジョー マローンの定番「イングリッシュ ペアー & フリージア」、BYREDOの「バルダフリック」を経て「インフロレセンス」という香りに辿り着き、これを“生涯の推し”にしようと決めたはずからの2年前、ふらりと立ち寄ったジョー マローンで出会った「ワイルド アキレア」という香りにハマってしまい、そのときサンプルでもらった「ワイルド ブルーベル」のローションも大変気に入ってしまう。さらにBYREDOの「ジプシー ウォーター」も気になってオイルパフュームを購入し、そこから「ブランシュ」、「ラ チューリップ」共に気に入り困惑。
現在、BYREDOの香水は最低でも3万円近くと、かなり強気な価格設定。買い足すならせめて「ブランシュ」か「ラ チューリップ」のどちらかに絞りたい。。そこで渋谷cocoti1階のTOMORROWLAND内のBYREDOコーナーで何度もタッチアップを繰り返したものの、決めきれず。そんなとき、公式サイトで販売されている有料サンプルセットの存在を知り、取り寄せることにした。
このサンプルセット、価格はなんと8030円。ただし、同額のバウチャー(4週間有効)が付いてくる。これを使って、「ブランシュ」か「ラ チューリップ」に決着をつけるつもりだった。
そして、今日。そのサンプルが届いた。
ここ最近のネットショッピング、いや、これまでのオンライン購入の中でも、ひときわ感動した体験だった。美しい梱包、美しい箱。加えて、どの香りも本当に素晴らしく、苦手なものがひとつもなかった。さすがBYREDO、と心から感心した。
そして、ふと思った。かつて私が憧れた森遥子や山田詠美は、選んだ香りを変えずにずっと纏い続けていたけれど、私はどうやら、そういうタイプではないらしい。何十年もの時を経て、それがようやく腑に落ちた。
いまの悩みは、8030円のバウチャーを何に使うか、ということ。このトラベルエディション、3種類を自由に組み合わせられるらしい。結局、サンプルを取り寄せてもまだ迷っている。ただそれは私にとっての香水に纏わる愉しみでもあるのだと思う。