スリーピーホロウと馴染めない場所の話
19世紀に書かれたアーヴィングのスケッチブックを読んだ。この本、冒頭のアメリカからヨーロッパに向かう旅の描写がすごく素敵だし、イギリス各地を巡った時の感想もいい。当時のイギリスの様子がとてもリアルに伝わってくる良書だと思う。
今回、上下巻含めて再読して、いちばん記憶に残ったのは最後のスリーピーホロウの話だった。ざっとあらすじをまとめると、田舎に配属された学校教師のイカボッドは地元の名士の娘といい関係になったつもりでいたけど、とあるキッカケで実は相手にされてないことが判明する。そしてその後イカボッドは行方不明になってしまう。それが首なし騎士に連れ去られたという伝説になったという、そんな話。
あまりにも唐突にその話が出て、さらにそれでスケッチブック自体が終わってしまうから、唖然とした。そして前回はそこまで深く考えなかったけど、もしかして、これは溶け込んだつもりでいて、実は英国に受け入れられなかったアーヴィング自身を暗喩しているのかもしれない、そんなことを考えた。イギリスを細やかに描写してきた流れの中で、最後にこうした断絶的な物語が置かれていることに、どこかズレのようなものを感じたからだ。
実は自分の認識と世界は違かった、みたいな話で他に印象に残っているのは、カフカの「城」とアガサ•クリスティの「春にして君を離れ」。「城」は自分が異物であることを少しづつ認識していく話で、「春にして君を離れ」は、それを強烈に自覚した後に見なかったことにする話。
自分自身が属している世界やコミュニティに対して異物であると感じたことは私も何度もある。そのうちの一回は現在進行形で、よかれと思ってやってたことを、実は全く相手は必要としてないどころか疎ましく思ってたんだろうと約1年前に気がついた。
それを長年気づかなかった自分にもびっくりしたけれど、もっと早くはっきり伝えてくれてもいいのにと思った。ただ気づきを促すというのがその場のカルチャーだ。そしてその場に留まり続けたいなら、合わせる必要があるのは私の方、だった。
カルチャーがフィットしていないことを自覚しながらその場に留まることが果たしていいのかは定期的に考える。
アーヴィング自身はしばらく英国に滞在した後にヨーロッパへ移住した。英国ではない、という失意によるものなのかそうじゃないのか。少なくとも、自分が属していると思っていた場所から少し距離を取るという選択をした点で、いまの自分にはとても参考になる。
急に19世紀の作家に親近感がわいた。