妊婦と淫夢
妊娠してびっくりしたことのひとつに「お腹(≒子宮)が張る」という感覚がある。ネットで「張るとはどういう状態か」を「お腹の中にパンパンのバレーボールが入っている感じ」と形容していた人がいたのだけれど、私の実感もそれ。
「張る」とは子宮が膨張して、柔軟性を失っている状態。それが続くと流産・早産にもつながるあまりよろしくない現象のため、張った時は横になり、「張り」がおさまるのを待つのがセオリーだ。
ただこの「張り」を人工的に起こす方法がある。それは性的に興奮することだ。
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性的に興奮している男性のあそこが大きくなる、ということを最初に体感したのは中学の水泳の授業だった。
「こいつ、大きくなっている!」と同級生にはやし立てられ、顔を真っ赤にしながらプールに飛び込み、その後頑なにプールからあがってこなかったとある男子。彼から私が学んだのは「男の人って大変だなあ」だった。
その後大人になって、ふいに抱きしめられた時、男性とふたりでバーのスツール椅子に座っていた時など、誰かの「大きくなっている」を目撃することが少なからずあった。
お互いに性的な欲望が高まっているならともかく、そうでもない時の誰かの「大きくなっている」は、あの日の水泳の授業で興奮してしまった男子を見つけた時のような心境。私ごときに欲情してくれた男性には大変申し訳ないのだけれど、そんな「大きくなっている」をみかけるたびに、私はこっそりにやりとした。
ところが、「お腹が張る」である。齢40にして、私は「大きくなっている!」と言う側から言われる側になったような感覚に陥った。もしこの体で誰かに欲情したのなら、抱き合った時、相手は私のお腹がバレーボールのように固くなっているのを感じて「あ、こいつは俺に欲情しているな」とにやりとするのだろうか。
もちろん「張る」は何も欲情した時とは限らない。動きすぎた時や胎動が激しすぎる時なども「張る」は「張る」。
ただそういえばそんなことを男性からもよく聞かされていたなあと思って気まずくなる。別に興奮している時だけが大きくなる訳じゃないよ、と必死で弁明されたのはいつのことだったろう。あの時、そうなんだ、と言いながら、ちっとも信じていなかった自分自身にしっぺ返しを食らった気分になる。
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ある朝、目覚めたらお腹がパンパンに張っていた。心なしか汗ばんでもいた。
―淫夢でもみていたんだろうか。
私は一刻も早く張りがおさまるよう、必死でお腹を撫でた。お腹の子から「大きくなっているよ」と突っ込まれたような、なんともきまずい心持ちがした。