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makicoo — essays 2017–2026

ヒカリエよりも、初台の古ぼけたビルのこと

2021-03-06 / 考えごと・人生 / 日記

まだ元住吉に住んでいた頃、新宿が勤め先で一度渋谷に出てから山手線で新宿まで通っていた。どちらの電車もすごく混んでいたから朝は毎日憂鬱の塊。だからその職場をやめ、2ヶ月の専業主婦期間を経ていざ転職、となった時に、できれば渋谷の職場を、と思っていた。なのに決めた先は新宿より更に遠い初台で、我ながら思っていることと決めることは違うなあと苦笑した。

ところが入社して2年後、なんと会社が渋谷ヒカリエに移転することになり、念願の渋谷勤務となった。それまでのオフィスがあった初台のビルはオシャレとは縁遠い雑居ビルだったから、引っ越し当初はあまりのギャップに戸惑った。それでも東急東横線渋谷駅からヒカリエの利便性は抜群で、会社が移転してくれて本当によかったと感謝しながら通っていたように思う。

それなのに、今こうして当時を振り返ると通勤に纏わる記憶がない。それより、新宿駅の南口を出て、前の職場があったKDDIビルを通り過ぎ、文化服飾学院の横の遊歩道を歩いたことはよく覚えている。なんで前の職場より遠い所に転職決めたかなーとKDDIビルをみるたびに思って、だけど一緒に働いている同僚達が皆本当に優秀で、自分もその仲間なのだ、ということがたまらなく嬉しかった。遠い遠いと思いながらいちどもそれが原因で休もうと思ったことはなく、そう、今思うと、前の職場より遠いところに嬉々として通うというのは、私にとっては幸福の確かめ算だった。だからずいぶんと通うのが便利になった時のことより、不便だなあと思いながら歩いていた時のことが、こんなに今でも鮮明に覚えている。

それから私は2回、通勤の利便性を考えた上で転職をした。この先、当時の元住吉から初台に通うような、そこまでして通いたい会社に巡り会えたなら、それはそれで幸せなこと、そう思う。近いに越したことはないのだけれど。

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